- 「サービス残業が当たり前の派遣先だった」
- 「事前に聞いていた仕事内容や条件と違う派遣先に派遣された」
- 「給料が支払われない」
ブラック派遣を経験したことがある人やウワサを聞いたことがある人は、ブラックな派遣会社や派遣先に当たったらどうしようと不安になりますよね。
でも安心してください。
インターネット検索や求人内容、担当者の対応を確認すれば、だれでも簡単にブラック派遣を見分けられます。
当記事では、
- ブラック派遣の特徴と見分け方
- ブラック派遣に当たりやすい年齢層
- 万が一ブラック派遣に当たった場合の対処方法
などを紹介しています。
この記事を読めば、ブラックな派遣会社や派遣先を回避でき、ブラック派遣で苦しむことなく派遣社員として働けますよ。
ブラックな派遣会社とブラックな派遣先がある
ひとことに「ブラック派遣」と言っても、派遣会社がブラックな場合と、派遣先がブラックな場合の2パターンがあります。
ブラック派遣を経験したことがある派遣社員61人にアンケートを行ったところ、28人は派遣会社が、33人は派遣先がブラックだと回答しています。
派遣会社と派遣先、どちらにもブラックの可能性があるわけですね。
派遣会社と派遣先、それぞれのブラック内容について見ていきましょう。
ブラック派遣の特徴と見分け方
ブラック派遣会社とブラック派遣先、それぞれの特徴は以下の通りです。
- ●ブラック派遣会社の特徴
- ・実際の仕事内容や条件と違う案件を紹介する
・営業担当者の態度やパワハラがひどい
・給料の未払いがある
・残業代が出ない - ●ブラック派遣先の特徴
- ・パワハラが横行している
・残業の強制やサービス残業がある
・事前に聞いていた仕事内容と違う仕事をさせる
・派遣社員に対する差別がひどい
ブラック派遣の特徴を見ると、ブラック派遣には当たりたくないですよね。
そこで、ブラック派遣会社やブラック派遣先に当たらないためにはどうすればいいのか、見分け方について紹介します。
ブラック派遣会社の見分け方
まずは、派遣元である派遣会社がブラックかどうかを見分ける方法です。
- 人材派遣業の許可を受けているか
- 過去に事業停止命令や改善命令を受けていないか
- 口コミや評判が良いか
- 怪しい求人が出ていないか
- 派遣社員に対する対応は悪くないか
1つでもおかしな点がある場合、ブラック派遣会社の可能性があります。
ブラック派遣会社に登録しないために、見分け方について更に詳しく説明しますね。
派遣会社が人材派遣事業の許可を受けていないかチェック
まずは登録を検討している派遣会社のホームページに、人材派遣事業の許可番号が掲載されているかチェックしましょう。
なぜなら、許可番号がない派遣会社は、無許可で派遣事業を行っている違法派遣会社だからです。
許可番号が確認できない場合は、派遣会社が許可・届出事業所か確認できる人材サービス総合サイトをチェックしてみてくださいね。
インターネット検索で行政処分歴や口コミをチェック
インターネット検索では、以下の2点を確認しましょう。
- 登録を検討している派遣会社が、過去に事業停止命令や改善命令を受けていないか?
- 口コミや評判
事業停止命令や改善命令を受けている派遣会社は、「派遣 業務停止命令」「派遣 改善命令」と検索すると出てきます。
法令遵守が徹底されていない、ブラック派遣会社の可能性があるので要注意です。
- 二重派遣
- 基準を満たしているのに社会保険に加入させない
- 無届けで派遣業務を行っている
- 報告書類などの未提出
- 派遣の期間制限違反
- 派遣禁止の職業に派遣している
- 残業代の未払い
口コミや評判は、実際に派遣会社で働いたことがある派遣社員の声を聞けるので、ブラック派遣会社なのかどうかの参考材料になりますよ。
当サイトでは、登録しない方がいい派遣会社の特徴について独自アンケート調査を行ったので、気になる方はチェックしてみてくださいね。
怪しい求人が出ていないか
- 他の派遣会社求人と比べて明らかに条件が良すぎる求人
- 長期間出続けている求人
- 仕事内容の詳細が書かれていない求人
上記の求人を出している派遣会社は要注意です。
条件の悪い求人や人気のない求人を紹介するために、登録者を増やすのが目的となっている求人の可能性もあるからです。
怪しい…と思ったら、派遣会社に問い合わせて求人の詳細を確認してみましょう。
なぜ条件が良いのか、なぜ長期間求人が出ているかの根拠や、求人の詳細をきちんと教えてくれるのであれば問題ありません。
派遣社員に対する派遣会社スタッフの対応は悪くないか
派遣社員に対する営業担当者やコーディネーターの態度を確認しましょう。
派遣会社のスタッフの対応が悪い場合、派遣社員を単なる求人の穴埋め要員としか思っていない可能性があるからです。
派遣社員を穴埋め要員と思っている派遣会社は、
- 希望していない仕事を紹介してくる
- 給与の支払いや書類にミスが発生する
- 給料の未払い
- 勝手に契約更新する
- 時給を下げる
- 有給休暇を取らせない
- 残業代を出さない
など、ブラック派遣会社ならではの、あり得ない対応をしてくるので注意しましょう。
派遣先との顔合わせでチェックすること
派遣先との顔合わせまで進んだら、以下の3点をチェックしてください。
- 派遣先担当者の態度
- 派遣先の職場の雰囲気
- 派遣先からの説明内容や質問内容
違和感や不信感を抱いたら、ブラック派遣先の可能性があります。
具体的なチェックポイントを見ていきましょう。
派遣先担当者の態度が悪い
派遣先担当者の態度に
- 威圧感
- 横柄さ
- 派遣社員を馬鹿にしたような口調
があったら要注意です。
なぜなら、派遣先担当者は直属の上司になるケースがほとんどで、態度が悪い上司のもとで働くことになってしまうからですね。
また、担当者だけでなく、派遣先全体が人間性に問題のある社員が集まっている可能性もあります。
顔合わせの際は、派遣先担当者の態度をよく見極めてください。
上記内容とあわせて、「頼りになる営業担当者の特徴とは?派遣の営業担当者が合わない場合の対応方法も合わせて紹介」の記事も参考にしてみてください。
派遣先の職場の雰囲気が悪い
派遣先の職場の雰囲気や社員が
- 殺伐としている
- 怒号が響いている
- 仲が悪い
- 疲れ切っている
- 挨拶がない
- 整理整頓や掃除が行われていない
といった様子だと、働きづらいブラック派遣先の可能性があるためおすすめできません。
顔合わせの際は、確認できる範囲で職場の雰囲気や社員の様子をチェックしてくださいね。
パワハラやセクハラを感じる説明や質問がある
顔合わせの際に、パワハラやセクハラと取れる説明や質問があったら、ブラック派遣先と考えて良いでしょう。
パワハラやセクハラは違法行為です。
初対面である顔合わせで、セクハラ・パワハラを行う派遣先は辞退しましょう。
以下は、顔合わせで注意したい派遣先からの説明や質問の例です。
- 「彼氏彼女はいるか」「子供を作る気はあるか」などのセクハラ質問
- 「根性はあるか」「我慢強いか」といった根性論や精神論の話
- 平均残業時間や離職率についての説明があいまい
セクハラやパワハラに不安を感じている方は、上記とあわせて「派遣先企業で派遣社員がパワハラ・セクハラ・モラハラ被害にあった場合の対処方法」の記事も参考にしてみてください。
ブラックな派遣先は業種・職種関係なくある
派遣先の職種や業種に関係なく、ブラックな派遣先はあります。
ブラックな派遣先を経験したことがある派遣社員経験者に、ブラックだった派遣先の業種や職種についてアンケートを行ったところ、以下の結果となったことからも分かります。
ブラックだった派遣先の業種
業種 | 人数(人) |
---|---|
物流・倉庫 | 10 |
製造 | 7 |
建設 | 6 |
IT | 5 |
サービス | 5 |
メーカー | 4 |
医療 | 3 |
通信 | 3 |
コールセンター | 2 |
学校 | 2 |
金融 | 2 |
旅行 | 2 |
運送 | 1 |
運輸 | 1 |
NPO | 1 |
アウトソーシング | 1 |
出版・印刷 | 1 |
飲食 | 1 |
官公庁 | 1 |
漁業 | 1 |
商社 | 1 |
小売り | 1 |
人材派遣 | 1 |
駐車場 | 1 |
電力 | 1 |
農業 | 1 |
不動産 | 1 |
(※回答数:66人)
ブラックだった派遣先の職種
職種 | 人数(人) |
---|---|
事務 | 17 |
製造・軽作業 | 12 |
営業 | 4 |
イベントスタッフ | 3 |
システムエンジニア | 3 |
テレオペ | 2 |
施工管理 | 1 |
ネットワークエンジニア | 1 |
解体 | 1 |
大工 | 1 |
講師 | 1 |
進行管理 | 1 |
プログラマー | 1 |
清掃員 | 1 |
テレアポ | 1 |
調理 | 1 |
引越し作業 | 1 |
(※回答数:52人)
業種や職種に関係なく、ブラック派遣先には注意してください。
中高年はブラックな派遣先に当たりやすい
中高年の派遣社員は、ブラック派遣先に当たりやすいので気をつけてください。
人手不足が叫ばれている今、派遣先企業も若い人材を確保したいと考えています。
結果、好条件の求人は若い人に集中し、イジメやパワハラ、サービス残業の強要が行われるブラック派遣先は、なかなか仕事が見つからない中高年に紹介されやすいです。
中高年で派遣として働く人は、ブラック派遣に当たらないように、特に注意して派遣先を見極める必要があります。
派遣会社選びに不安な方は、「40代の派遣登録は厳しい?登録するべき人材派遣会社と採用される7つのコツ」の記事も参考にしてみてください。
ブラック派遣に当たった場合の対処方法
ブラック派遣に当たったら、まずは
- ブラック派遣会社は登録を解除する
- ブラック派遣先は派遣元に相談する
という対処をしてください。
派遣会社や派遣先がブラックだからと言って、バックレるのだけはやめしょう。
トラブルに発展する可能性もあるので、バックレはおすすめできません。
ブラック派遣に当たった場合の、具体的な対処方法について紹介します。
ブラックな派遣会社に登録してしまったら登録を解除しよう
登録だけで仕事を開始していないなら、すぐに派遣登録の解除をしてください。
もし、仕事を開始しているなら、契約終了までは仕事をこなし、契約更新を行わずに派遣登録を解除してください。
詳しいやり方については、「派遣登録の削除・抹消方法|登録解除をしても個人情報は残るの?」の記事で解説しています。
派遣会社は1社だけではありません。
ブラックな派遣会社には関わらないようにするため、「優良派遣事業者」に認定されている派遣会社に登録することをおすすめします。
その他の対処方法として、
- 派遣会社の本社(コールセンター)に相談する
- 担当者を変えてもらう
- 労働基準監督署に相談する
- 労働局に通報する
といった方法もあります。
状況に応じて対処をしてくださいね。
派遣先がブラックだったら派遣元に相談しよう
派遣先がブラックだった場合は、派遣元や営業担当者に相談しましょう。
営業担当者が派遣先に掛け合ってくれ、労働環境が改善するケースもあるからですね。
状況が改善しない場合は、派遣先を変更してくれることもあります。
相談する際に大切なのは、派遣先がブラックだという証拠を出すことです。
例えば、サービス残業を強いられているケースなら、時刻が分かるようにパソコンのスクリーンショット画像や、業務に関するメール送信時間がわかれば証拠になります。
証拠があれば営業担当もすぐに動いてくれますよ。
相談したにも関わらず状況が改善しない場合は、契約更新まで待って契約を終了し、派遣先をやめましょう。
まとめ
ブラック派遣を見分けるためには
- 人材派遣事業の許可
- 行政処分歴
- 口コミ
- 求人内容
- 派遣会社のスタッフの対応
- 派遣先の雰囲気
などを重点的にチェックすることです。
チェックしたにも関わらずブラック派遣に当たってしまった人は
- ブラック派遣会社は登録を解除する
- ブラック派遣先は派遣元に相談する
という対処方法でブラック派遣から逃れてくださいね。
最後に当記事の監修者、西岡社会保険労務士事務所代表の西岡 秀泰氏からアドバイスいただいたのでご紹介します。
ブラック企業対策を含め派遣労働者の方に知っておいてほしいのは、「派遣労働に関わる法律知識」と「困った時の相談先」です。
正社員と比較して周囲から教えてもらう機会が少ないため、自分で意識して情報収集しましょう。
たとえば、労働者派遣法では、労働契約に違反があれば契約解除できると定められていて、該当すれば契約途中で辞めても違約金の心配はありません。これだけの知識があるだけで、契約する際には労働契約書を慎重にチェックしようとするかもしれません。
また、派遣会社・派遣先には、派遣労働者の相談、苦情に対応する責任者を置く義務があります。
ブラックの原因が担当者ならば、各責任者に相談しましょう。
会社自体がブラックならば、外部に頼るしかありません。相談先に迷ったときは、各県に複数ある「総合労働相談コーナー」をおすすめします。各種相談や情報提供をワンストップで受けられます。
派遣労働者に限りませんが、「何事も会社任せにせず、自分の身は自分で守る」という気持ちが重要です。
西岡 秀泰氏
社労士、FP2級、西岡社会保険労務士事務所代表。
生命保険会社に25年勤務した後、社会保険労務士事務所を開業。社労士として活動する傍ら、日本年金機構・年金事務所で年金相談員として勤務。
労働者を支える労働保険・社会保険について、わかりやすく解説していきたいと考えています。
当記事は、弁護士の坂東大士氏からリーガルチェックいただいております。
澁谷・坂東法律事務所
坂東大士(ばんどう ひろし)氏
(大阪弁護士会 登録番号 47642)
経歴
2009年 関西大学法科大学院 卒業
2011年 司法試験 合格
2013年 大阪弁護士会登録
2019年 澁谷・坂東法律事務所開設
所属団体
大阪弁護士会労働問題特別委員会
租税訴訟学会
関西圏国家戦略特区雇用労働相談センター雇用労働相談員(2015年度)
東大阪商工会議所会員
弁護士の視点から当記事が法的に問題ないかをチェックしていただいております。
- 調査対象:ブラックな派遣会社や派遣先を経験したことがある人
- 調査期間:2019年9月23日~25日
- 調査機関:自社調査
- 調査方法:インターネットによる任意回答
- 有効回答数:61人)