【ビッグダディ・林下清志さんインタビュー】「人生はマラソンではなく駅伝」人が子孫を残すということ

20人以上の子供を持つことで「ビッグダディ」の愛称で慕われている林下清志さんへインタビューさせていただきました。

「俺自身が、子供に救われた」

そう話したのは、通称「ビッグダディ」こと林下清志さん。大家族の生活をテーマに、テレビの密着ドキュメンタリー取材を受けたことで一躍有名となった人物です。

ビッグダディさん

7度の結婚と7度の離婚を経験。子供をつくり、子供を育て、歴代の奥さんの連れ子まで含めると、林下さんの家族となって生活をしてきた子供の数は20人を超えます。実は林下さん本人もかつては11人兄弟の6男という大家族の環境で暮らしてきた経験を持つそうです。

日本では少子化が大きな社会問題とされている中、驚異的なバイタリティで子供の数を増やしてきた林下さん。一般的な人間と何が違うのでしょうか? 私たちは今こそ、林下さんを見習うべきなのでは?

少子化問題を解決するための糸口を、ビッグダディ流の考えの中から見つけ出したいと思います。

林下さん、本日はよろしくお願いします

どうも、よろしくお願いします。

日本の少子化対策は意味がない?子供はどうしたら生まれるのか

真剣に話すビッグダディさん

とにかく子供が生まれなくて困っています。日本の少子化対策についても、政府が色々と検討、導入していますが、どう思われますか

根本的な問題の解決にはならないと思いますね。かつては子育て給付金だとか児童手当だとかありましたが、そもそも「月に一万数千円もらえるの!? やったー、それなら子供つくろう!」なんて考える人がいるわけないですからね。

2020年には全ての子供たちの保育園・幼稚園の費用を無償化する「幼児教育無償化」なんていう制度も導入されるという噂もありますが。どうしたら良い政策が誕生するのでしょうか

そもそも少子化の原因を「お金がないから」と安易に考えていることが問題だと思いますよ。

俺ね、思うんですよ。そういう政策を考えているのは日本のトップ、エリート官僚の人たちなんですよね。彼らに少子化問題を解決させるアイディアが出せないなら、いっそのこと「何にも知らない人」を会議の場に混ぜれば良いと思います。何にも知らないからこそ、パッと斬新なアイディアが出るかもしれない。

ビッグダディさんの後ろ姿

なるほど。林下さんは日本が少子化になった原因はなんだと思いますか

みんなね、色々とゴチャゴチャ考えすぎなんですよ。

「ちゃんと育てられるのかな?」
「お金がなくても大丈夫なのかな?」

そんなことを不安に考えて子供をつくらないのは人間だけ。本来、子づくり、子育てっていうのは動物の本能に基づいて行われることなのに、この地球上のあらゆる生物で人間だけができていない。

だから、色々と考えすぎていることが問題だと思いますね。そもそも

「お金があれば良い子育てができるのか?
「お金があれば良い教育ができるのか?」

ぜんぜん、そんなことないですよ。

ビッグダディ流の子育て論

熱く話すビッグダディさん

それでは良い教育、良い子育てとはなんでしょうか

まずね、「正しい教育、正しい子育て」というのはないんです。子育てっていうのはね、好きにやって良いんですよ。

金をかければかけただけ良い教育ができるとか、考えれば考えるだけ良い子育てができるとか、そんなことで誰でも間違いのない人生が送れるのだとしたら、クソみたいなもんですよ。

そのようにいかねぇよ、子供なんて。絶対にね。

子供ってね、コツコツと働く親父の背中を見て「親父って立派だな」と思うのもいれば「親父ってバカだな。もう少し要領良く生きれば良いのに」と思うのと、両方いるわけです。

自分が思うほど、親っていうのは子供に対する影響力なんてないんです。

そこをまず分かって欲しい。

子供は、親がどんなに立派な人物でも、親がどんなに理屈を並べて正しい教育をしようとしても、その子の感受性の通りにしか育たないんです。理屈でジャニーズのトップアイドルとか、スポーツのトップ選手が育てられるんなら、みんな必死でやりますよ。ところが実際はそうならないのが子育てですよ。

どんなにだらしない親が育てても、その子は社会に出て恥ずかしくない人物に育ち、「自分の親はだらしなかったなぁ」と言うようにもなるし、どんなに厳しい親に育てられても、その子がだらしない生活を送りながら「ウチの親は厳しかったなぁ」と愚痴をこぼすようにもなる。その子なりにしか育たないんですよ。

なるほど。正しい教育など、そもそもないということですか!?

ビッグダディさんの手

どの時代にも子育ての確固たるバイブルというのは存在しないし、どんなにすごい教育論者が出てきたとしても、その人が言うのはただの理屈。その理屈どおりに子供っていうのは育たない。

もし子供が社会的に立派な人間に育っても、それは親の手柄じゃないんですよ。その子の力です。

逆に、もし子供が反社会的な人間になっても、それは親だけの責任じゃない。

うわー、そういう考え方もあるのか。それは肩の荷がおりた感じがしますね。

子育てなんてね、犬でも猫でも、ちゃんとやってるんですよ。考えてやろうとするのは人間だけ。

それっていうのは「これだけ考えて、ちゃんと子育てをしている!」「これだけ子供に立派な環境を用意してあげられている!」っていう、自己承認欲求を満たしたいだけなんです。

自分が子育てで失敗したって思いたくないし、間違えたって思いたくないんです。

だから、子育てって好きなようにやって良いんですよ。あとは子供の感性に委ねるしかない。楽しみながら、自分の好きなようにやれば良いんです。

なるほど!林下さんの話を聞いて、すごく楽になりました。子育てに関しては気軽にチャレンジできそうです。

子供をつくるということ

腕を組むビッグダディさん

ところで子育てをするためには、まずは子供をつくらないといけないのですが、そもそも子供ってなんなんでしょうか。どうして人は子供をつくるのが大切なのでしょうか。ビッグダディ流の考えを聞かせてください。実はそれが、少子化対策の最大のヒントになるかも知れないと考えています。

本質的な話だね。これ、どれぐらい尺をもらって良いの?(笑)

まず、自分の話をさせてもらうとね、俺はもともと自分が特別な人間だと思い込んでいたんだよね。

「俺は選ばれた人間だ」
「自分は何かを成し遂げるため、使命を持って生まれてきている」

子供の時は本気でそんなことを考えていて、ちょっと頑張って勉強して良い高校に行って。でも、色んな人間を見ている内に気が付いたんだよね。

「俺よりすごい人間なんて山ほどいる」って。

この世には本当にヒーローみたいなやつがいて、愛する人が命の危険に晒された時、平気で身を投げ出せるやつがいるってことも知って。

自分の女に拳銃を向けられて、なんのためらいもなく体を差し出せるかって考えた時「いやぁ、できそうにもねぇな」とか考えたりして。自分には何の特技もないし能力もないし、とか考えていたら、急に自分がちっぽけな存在に思えてきて。自己嫌悪になってね。

でもね、それが子供が生まれたら変わったんだよ。

子供が生まれたことで、林下さんの人生観が変わったということですか

ある日、自分の子供をみていて「もし、こいつが車に轢かれそうになったら」って想像したことがあったんだけどね。もうね、なんの迷いもなく身を投げ出して守れる自分がいるってことが分かったんだよね。

「なーんだ。 俺って、そんなに悪い人間でもなかったんじゃん…」

ってその時、初めて気がついて。世間ではたくさんの子供を育てた有名人だとか、「ビッグダディ」とか言われてるけど、俺自身が一番、子供に救われてるんだよね。

ビッグダディさんの横顔

自己肯定感というか、自分の生きる価値、みたいなものが見つかったということですか。子供を通じて。

自分の人生が何か。自分はなんのために生まれてきたのか。そうやって考えている間は気がつきにくいんだけど、「自分はどうして今、ここにいる?」って考えると、答えは明らかなんだよね。

じいちゃんばあちゃんがいて、親父とか母親がいて、そして俺が生まれた。

つまりは、人間が生きる意味っていうのは「次世代の育成」なんですよ。そのために子供をつくるわけで。

人の人生はよく「生まれてから死ぬまでのマラソン」みたいに例えられるけど、そうじゃない。人生っていうのは駅伝なんだよね。

子孫を残して代々、バトンが受け継がれていく。

例えば、自分が偉人になれなくても。社会に何か良いことをしたいと思っていて、それができなかったとしても。もしかしたら、自分の子供はやるかもしれない。自分の子供はダメでも、その子供、つまりは俺の孫ならやるかもしれない。孫はダメでも、ひ孫が成し遂げるかも知れない。

いつか、その子孫の誰かがものすごい社会に対して良いことをした時、じゃあそいつはどうしてこの世にいるのかって考えると

「俺がいたから! 俺がいたから!」

ってね。そんなふうに誇れるようになる。そんなもんでしょ。

自分が生まれてきた理由とか使命が欲しいのなら、シンプルに「子孫を残すため」って考えれば良いんじゃないかな。それだけで、人の人生っていうのは随分と楽になる。

なるほど、とても参考になりました! 子供をつくるかどうか、悩んでいる人にぜひとも届けたい、素敵な考え方です。本当にありがとうございました。

まとめ

笑顔のビッグダディさん

「ビッグダディは本当にビッグダディだった」

インタビューを終えた今、そんな感想が出てきます。

どうして自分がここにいるのか、自分は何をすべきなのか。自分は、自分は、とばかり考えていると絶対に見えてこないものがある。林下さんはそれを教えてくださいました。

子供って本当に大事なんだなぁ、とも思いますし、育てるのは大変なこともあるでしょう。

だけれど、林下さんを見習うのなら、子づくりや子育ては「考えすぎず、気負いすぎない」ことが大切なんだと感じます。お金があるから良い子育てができる。お金がないからできない。それは大きな間違いであると。確かにそう思います。

この記事を読んで、皆さんはどんなことを考えますか? 少子化を打破するためのヒントは十分に得ることはできたのではないでしょうか?

正解もなければ、失敗もない。

ただ、脈々と受け継がれていく。それこそが人間なのだと。

<取材/文 竹内紳也>
<写真 高木亜麗>

ビッグダディこと林下清志さんのオフィシャルホームページはこちら
https://big-daddy.jp/