3年ルールとは?派遣の抵触日やリセットされるクーリング期間の注意点

派遣の3年ルール
  • 「同じ派遣先でずっと働けないって本当?」
  • 「派遣には抵触日があるって聞くけど一体なに?」
  • 「抵触日が来たらどうしたらいいの?」

派遣社員として働く中で、「抵触日」という言葉を見たり聞いたりすると思います。

結論から言うと、抵触日とは「派遣期間の制限を過ぎた最初の日」を指し、それ以降は同じ派遣先で働くことはできません。

抵触日が最長3年であることから「3年ルール」とも呼ばれています。

派遣社員のキャリアアップを促進する目的で、2015年に派遣期間の制限を定める労働者派遣法改正で抵触日が導入されました。

当記事では、

  • 抵触日についてのわかりやすい解説
  • 抵触日を迎えた時の対処方法
  • 抵触日を迎えて無職になった場合の失業保険
  • 抵触日がリセットされるクーリング期間の注意点

などを紹介しています。

この記事を読み終わる頃には「派遣の抵触日」について理解でき、「抵触日を迎えた後どうすれば良いのか?」を明確にイメージできていることでしょう。

当記事は、社会保険労務士の山下洋平氏、弁護士の坂東大士氏のお二人からそれぞれの視点から監修していただいております。

以下、お二人のプロフィール情報を紹介します。

社労士事務所エゼル 山下洋平氏
社労士事務所 エゼル
山下 洋平氏

学校を卒業後、東京に出てコンピュータソフト開発会社にてプログラマー、システムエンジニアの仕事をしました。

その後会社を退職し、個人事業という立場でいくつかの会社と請負契約をして、ソフト開発を行ったり、個人や法人向けのパソコン訪問サポート業務をしたり、また派遣会社に登録して官公署内でのパソコンネットワークヘルプデスクの担当をしたりと、長年にわたりIT関係の事業に携わってまいりました。

この派遣会社との契約時に、派遣元が二重派遣に抵触するというトラブルに見舞われ、派遣切りに合い突然職を失ってしまいました。

それでそれを機に独力で株式会社を設立し、会社の経営に加え、社内の経理や労務事務も自力で対応しました。

しかし、法律は難しく時に失敗してしまうこともあり、しっかりとした知識が必要だと考え、仕事の傍ら独学で「行政書士」そして「社会保険労務士」の資格を取得しました。

その後、中堅の会社の管理部で数年の実務経験を経て、社会保険労務士事務所を開業しました。ITの知識や会社経営の経験を生かして、電子申請や助成金の申請などを中心に業務を行っています。

経営者の方が本業に専念できるよう、人事労務に関する「助け手」として最大限のサポートをすることをモットーに行っています。

弁護士 坂東大士(ばんどう ひろし)氏
澁谷・坂東法律事務所
坂東大士(ばんどう ひろし)氏

(大阪弁護士会 登録番号 47642)

経歴
2009年 関西大学法科大学院 卒業
2011年 司法試験 合格
2013年 大阪弁護士会登録
2019年 澁谷・坂東法律事務所開設

所属団体
大阪弁護士会労働問題特別委員会
租税訴訟学会
関西圏国家戦略特区雇用労働相談センター雇用労働相談員(2015年度)
東大阪商工会議所会員

弁護士の視点から当記事が法的に問題ないかをチェックしていただいております。

抵触日とは派遣期間の制限を過ぎた最初の日

「抵触日」とは、派遣期間の制限を過ぎた最初の日を指します。

2015年に労働者派遣法が改正され、同じ派遣先で3年以上働けない派遣期間の制限(3年ルール)が定められました。

派遣期間の制限を設ける理由は、派遣社員のキャリアアップや正社員としての雇用促進を目的としているからですね。

派遣社員は「臨時的・一時的な働き方」が原則となっています。

そのため、「長期にわたって派遣社員を雇用するなら、派遣先は派遣社員を正社員として雇用しましょう」という狙いが背景にあります。

ただし、以下の条件に当てはまる場合、派遣期間の制限を受けないため抵触日がありません。

  • 派遣会社に無期雇用されている派遣社員
  • 60歳以上の派遣社員
  • 終期が明確な有期プロジェクト業務で働く派遣社員
  • 日数限定業務(1か月の勤務日数が通常の半分以下かつ10日以下である)で働く派遣社員
  • 産前産後休業、育児休業、介護休業を取得する人の代わりに働く派遣社員

「3年ルール」といっても必ず3年で抵触日を迎えるわけではない

抵触日は勤務開始から最長3年でやってくることから「3年ルール」と呼ばれています。

結論から言うと、すべての派遣社員が必ずしも3年で抵触日を迎えるわけではありません。

抵触日は「事業所単位」と「個人単位」それぞれ用意されていて、個人よりも事業所単位の抵触日が優先されるからです。

●事業所単位の抵触日
事業所で派遣社員を初めて受け入れてから最長3年(※注意、派遣元の会社を変更しても、3年の期間は通算されます)
●個人単位の抵触日
同じ部署で派遣社員として働きはじめてから最長3年

・・・え?どちらも3年だけど何が違うの?と思った人もいるでしょう。

抵触日について図解つきでわかりやすく解説していきますね。

たとえば、Aさんを派遣社員として初めて受け入れた事業所があるとします。

事業所の抵触日は派遣社員を初めて雇い入れてから3年、Aさん個人の抵触日も同じく働き始めてから3年となります。

しかし、Aさんは1年で退職、新たにBさんを派遣社員として雇い入れました。

上記ケースの場合、Bさんの抵触日は働きはじめてから3年とはならず、2年になります。

なぜなら、事業所の抵触日が優先されるからですね。

事業所はBさんを雇い入れた時点で、抵触日まで残り2年となります。

抵触日は事業所が優先されることの図

実際に抵触日を迎えたことがある派遣社員の経験者21人に「どれぐらいで抵触日を迎えたのか」アンケートを行ったところ、個人の期間制限である3年以外で抵触日を迎えている人は21人中7人いました。

【調査概要】

  • 調査対象:抵触日を迎えたことがある派遣社員経験者
  • 調査期間:2020年2月27日~2月28日
  • 調査機関:自社調査
  • 調査方法:インターネットによる任意回答
  • 有効回答数:22人

派遣されてから抵触日を迎えるまでの期間についてのアンケート調査結果

すべての派遣社員が3年で抵触日を迎えるわけではないので、「自分の抵触日はいつなのか?」を事前確認しておきましょう。

抵触日は「就業条件明示書」に記載されている

抵触日は「就業条件明示書」に記載があります。

就業条件明示書は、派遣会社から雇用契約を締結した派遣社員へ発行する義務があるので、派遣社員の手元にあるはずです。

派遣会社によっては「労働条件通知書(兼)就業条件明示書」としているところもあるので、派遣会社からもらった書類をよく確認してくださいね。

就業条件明示書に記載があるのは以下の内容です。

  • 派遣労働者の個人単位の期間制限に抵触する最初の日
  • 派遣先の事業所単位の期間制限に抵触する最初の日

就業条件明示書の抵触日記載箇所例
引用:厚生労働省

抵触日を迎えた後の対処方法5つ

実際に抵触日を迎えた経験がある派遣社員21名に、抵触日を迎えた後どうしたのかアンケートを行ったところ、以下の結果となりました。

抵触日を迎えた後どうしたか? 回答者数
派遣先に直接雇用された 8人
無期雇用派遣となり派遣先に残った 3人
退職した(就業せず) 3人
部署変更で派遣先に残った 2人
別の派遣先で就業した 2人
求職活動を行った 1人
業務請負として派遣先と契約した 1人
違法だが今までどおりの雇用形態で派遣先に残った 1人

抵触日を迎えた後、直接雇用や無期雇用派遣になるカタチで、同じ派遣先に残っている人が21人中15人と3分の2以上を占めていますね。

しかし、中には抵触日を無視して今までどおりの雇用形態で派遣先に残ったり、業務請負契約へ切り替えたりと、違反行為や偽装請負の対処をしている人もいました。

これから抵触日を迎える予定がある人は、「抵触日を迎えた後の対処方法5つ」をまとめたので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

    1. 派遣先企業に直接雇用してもらう
    2. 無期雇用派遣になる
    3. 派遣先の他の部署に異動する
    4. 別の派遣先を紹介してもらって働く
    5. 自分で他の仕事を探す

1.派遣先企業に直接雇用してもらう

「いまあなたに辞められたら困るから、そのままウチで働いてくれないか?」

長年勤めた派遣先企業から、これまでの実績を見込まれることで直接雇用の提案を受けることもあります。

ただし、あなたのほうから「正社員として雇ってほしい」と提案しても雇ってもらうことは難しいです。

以下の口コミを見てもわかるように、派遣先企業から積極的な打診がないと直接雇用は難しいです。

【直接雇用された人の口コミ】

  • 派遣先企業からのオファーがあり、条件も納得のいく内容だったので直接雇用となりました。
  • 抵触日を迎えるずいぶん前から派遣先の人に「うちに就職しないか?」と誘われており、派遣で働くよりも好待遇の正社員という話だったので承諾した次第です。
  • 派遣先の企業から直接雇用のお話を頂いていたので有難く承諾しました。
  • 派遣先企業の担当者から直接雇用の話を頂いたので、契約社員として直接雇用されることとなりました。
〔出典〕独自アンケート調査

また、「直接雇用」といっても正社員だけでなく、契約社員やパートとして雇用契約するカタチで直接雇用になる場合もあります。

上記内容とあわせて、「派遣先企業からの引き抜きは断るべき?直接雇用で社員になるメリット・デメリットと注意点」の記事も参考にしてみてください。

2.派遣会社の「無期雇用派遣」として派遣先に残る

派遣先に残りたいけど「直接雇用を断られた」、もしくは「直接雇用は不安だからムリ」といった場合、無期雇用派遣という選択肢もあります。

「無期雇用」には以下のカタチで「有期雇用」の派遣社員にはないメリットがあるからですね。

  • 派遣の期間制限がなくなるので同じ派遣先で働き続けることが可能
  • 派遣先との契約終了後も、次の派遣先が決まるまで収入を得られる
  • 給料が月給制

実際に無期雇用派遣になった人が口コミの中で挙げているメリットをご紹介します。

【無期雇用派遣になった人の口コミ】

  • 無期雇用になることで、自己都合で退職しない限り期間を気にせず働けるようになったし、給料も上がりました。
  • 派遣会社から無期雇用の話をいただいたので、同じ派遣先で引き続き働くことができて良かったです。
〔出典〕独自アンケート調査

ただし、無期雇用派遣ならではのデメリットもあります。

「無期雇用派遣」は「有期雇用派遣」と違い契約期間の終わりがないので、「半年ほど派遣として働き、数ヶ月まとめて休む」といった自由な働き方はできなくなります。

さらに、あなたの働き方が優秀であればあるほど、派遣先へ直接雇用の提案をしてくれなくなります。

派遣会社としては、優秀な派遣社員を手放したくないことから紹介したら損になるからですね。

3.部署異動すれば同じ派遣先で続けて働ける

有期雇用派遣のままでも、部署異動すれば同じ派遣先で仕事を継続できます。

個人単位の抵触日は「同じ部署で派遣社員として働き始めてから最長3年」なことから部署異動することで抵触日がリセットされるためですね。

例:総務部から経理部に移動など(※注意、派遣先の過半数労働組合等からの意見を聴く必要があります)

部署異動のメリットを挙げると、部署は変わっても派遣先の会社自体は同じため、組織文化や社風は一緒な点です。

例えば、のんびりした社風の派遣先企業から体育会系の派遣先企業へ就業したら、合わなくて途中で辞めてしまうかもしれませんよね。

部署異動した人の口コミを見ても、慣れた職場で働き続けられて良かったことや、部署異動後もスムーズに業務へあたれていることがわかります。

【部署異動した人の口コミ】

  • 他の派遣先へ移らないで欲しいという派遣先の意向があり、部署異動という形で派遣先に残りました。契約内容は変わらず、慣れた職場で働き続けたかったので良かったです。
  • 部署異動しましたが、仕事内容も今までいた部署と近かったのですんなり業務にあたれています。
〔出典〕独自アンケート調査

ただし、部署異動で残り続けることは、メリットだけでなくデメリットもあります。

  • 新たな仕事を覚えたり職場環境に慣れたりする必要がある
  • 今までの経験やスキルを活かせない可能性もある
  • 派遣先の過半数労働組合の賛成を得ていなければ他部署に異動できない

ひとことにまとめると、部署異動でも会社変更と差がないぐらい違いが出るケースもあるということですね。

4.別の派遣先企業を紹介してもらう

  • 「これ以上、同じ派遣先はいいかな」
  • 「仕事内容を変えたくないから部署異動してまで残りたくない」
  • 「いまの仕事に飽きたから違う仕事がしたい」

同じ派遣先企業を継続することに対してこだわりがない人も多いと思います。

結論から言うと、別の派遣先企業を紹介してもらいましょう。

別の派遣先を考えるうえで、これまでの経験を活かせる仕事は選べるし、新たな知識や経験を積むことによるスキルアップの考えから、未経験の仕事へ就くことも可能です。

派遣会社の担当者に相談することで、あなたの希望にマッチした派遣先を紹介してくれることでしょう。

5.いまの派遣会社を辞めて次の仕事を探す

  • 「このまま派遣社員を続けることに不安がある」
  • 「派遣社員ではなく正社員になりたい」
  • 「いまの派遣会社は不満があるから別会社に移りたい」

「抵触日」は今後の方向性を決めるうえで、キリが良いタイミングと考える人も多いのではないでしょうか。

現在、登録している派遣会社の利用を辞めて、他の手段で次の仕事を探すのもひとつの選択肢といえます。

たとえば、

  • 他の派遣会社に移る
  • ハローワークで求人情報を探す
  • 転職サイトや転職エージェントに登録する

などが挙げられます。

いまの派遣会社を利用しない場合、抵触日のタイミングで無職とならないためにも、計画的に次の仕事を探しましょう。

他の派遣会社を探す際は、「大手派遣会社ランキング|172人の口コミ調査で大手6社を徹底比較」の記事も参考にしてみてください。

抵触日を迎えても失業保険に特別な優遇措置はない

抵触日以降の仕事がまだ決まっていない場合、失業保険をすぐ受給できるか気になる人も多いと思います。

抵触日を迎えたからといって、失業保険の受給に特別な優遇措置はありません。

なぜなら、筆者が最寄りのハローワークへ電話で確認したところ、以下の回答を得られたからです。

  • 派遣会社から次の仕事を紹介されたにもかかわらず断った場合は、失業保険の給付制限ありの自己都合退職扱いとなる。
  • 派遣会社から次の仕事紹介がない場合は、特定受給資格者扱いになり、給付制限なく失業保険を受給できる。

「直接雇用」「部署異動」「無期雇用派遣」のどれにも当てはまらない場合、雇用安定措置として派遣会社から、次の派遣先を紹介してもらえます。

ただし、次の派遣先紹介を断った場合、3ヶ月の給付制限を受ける自己都合退職となってしまうので注意しましょう。

失業保険を渡すかどうかの最終的な判断は「公共職業安定所」で行われます。

失業保険の給付に納得できなかったり理解できなかったりする場合は、居住地を管轄する公共職業安定所へ問い合わせすると、教えてくれますよ。

抵触日をリセットできるクーリング期間の注意点4つ

クーリング期間とは、抵触日をリセットできる空白期間のことを指します。

具体的に説明すると、抵触日を迎えてから少なくとも3ヶ月と1日間、それまで働いていた派遣先と派遣契約を結ばなければ抵触日がリセットされます。

抵触日がリセットされることで、また同じ派遣先で3年間働けます。

事業所のクーリング期間についての解説図

事業所が抵触日を迎えた場合も同じで、少なくとも3ヶ月と1日間、派遣社員を雇い入れなければ、また派遣社員を雇えます。

派遣社員のクーリング期間についての解説図

「抵触日を迎えても同じ派遣先で働き続けたいから、クーリング期間を利用しよう」と思った人もいるでしょう。

しかし、クーリング期間には4つの注意点があります。

    1. クーリング期間は雇用関係がなくなることも
    2. クーリング期間後に必ず受け入れてくれる保証がない
    3. 派遣先が延長手続きを回避する目的のクーリング期間はNG
    4. 直接雇用から派遣へ戻ることはできない

それぞれの注意点について見てみましょう。

1.クーリング期間は雇用関係がなくなることも

最短3ヶ月と1日のクーリング期間は、派遣会社との雇用関係がなくなることもあります。

なぜなら、抵触日を迎えた段階で派遣会社との契約更新がされないこともあるからです。

雇用関係がなくなると、社会保険を脱退する必要があります。

さらに、給料も発生せず、有給休暇もリセットされます。

ただし、任意継続の手続きを行えば、クーリング期間であっても健康保険には加入できます。

希望する場合はお住まいの都道府県にある協会けんぽ支部へ連絡してくださいね。

2.クーリング期間後に派遣先が必ず受け入れてくれる保証はない

クーリング期間後に派遣先が必ず受け入れてくれる保証はありません。

なぜなら、約束できたとしても口約束が限界で、きちんとした契約を結ぶことはできないからです。

クーリング期間中に派遣先の状況が変わり、派遣社員の代わりにパートやアルバイトを雇う可能性も考えられます。

派遣先が本気であなたに残って欲しいと考えているなら、延長手続きや直接雇用といった手段を取るはずです。

「クーリング期間が終わったらまた働いて欲しい」「抵触日がリセットされたら再度派遣契約をするから」といった派遣先の言葉は真に受けないようにしましょう。

3.派遣先が延長手続きを回避する目的のクーリング期間はNG

派遣先が派遣可能期間の延長手続き回避を目的としたクーリング期間はNGです。

労働者派遣法に反するため、派遣先は指導対象となる可能性があるからですね。

抵触日後も派遣社員を雇い続けたい場合、過半数労働組合の意見聴取をはじめとした延長手続きが必要となります。

派遣社員へのペナルティはありませんが、法的にNGな行為をする派遣先勤務はおすすめできません。

4.クーリング期間中に直接雇用となった後、派遣社員へは戻れない

「クーリング期間中だけ直接雇用、その後また派遣社員へ戻ればよいのでは?」と考える人もいるのではないでしょうか。

クーリング期間中に一度でも直接雇用になると、クーリング期間が明けた後に再度派遣社員として契約できません。

労働者派遣法第40条の9で「離職後1年以内の従業員を派遣社員として雇い入れられない」と、禁止されているからですね。

詳しくは「以前に働いていた派遣先への出戻りが難しい理由と戻るための方法」の記事でも解説しているので、あわせて参考にしてみてください。

まとめ

抵触日は、派遣期間の制限を過ぎた最初の日のことで、事業所単位の抵触日が優先されます。

  • 事業所単位の抵触日:事業所で派遣社員を初めて受け入れてから最長3年
  • 個人単位の抵触日:同じ部署で派遣社員として働きはじめてから最長3年

就業条件明示書に記載があるので、確認しましょう。

抵触日を迎えても、対処方法次第では続けて同じ派遣先で働けます。

抵触日を迎えた時の主な対処方法は以下のとおりです。

  • 派遣先に直接雇用してもらう
  • 派遣会社に無期雇用してもらう
  • 派遣先の他の部署に異動する
  • 別の派遣先を紹介してもらって働く
  • 自分で他の仕事を探す

最後に当記事を監修いただいた社労士事務所エゼルの山下洋平氏からのアドバイスを紹介させていただきます。

当記事の監修者、社労士事務所エゼルの山下洋平氏からのアドバイス

2015年に、派遣社員の待遇改善や正社員としての雇用促進を目的として、3年ルールが設定されました。

しかしそれに抵触することを回避するために、派遣社員の「雇い止め」が増えるという弊害が生じてしまいました。

また、派遣という自由な立場に満足し派遣先とも良好な関係を保って働いていたのに、3年ルールのせいで派遣先を変更しなければならなくなってしまったという方もいらっしゃいます。

派遣社員を直接雇用に切り替えるためのコストが余計にかかるようになるため、やむなく人員を減らさざるを得ない中小企業もあるでしょう。

そして2020年には、働き方改革の一環として、同一労働同一賃金を目的として、さらに労働者派遣法が改正されました。

派遣社員として働く方も、派遣社員を受け入れる会社も、派遣会社もそれぞれが、これらの法改正の内容をよく理解したうえで、その本来の目的を達成できるような雇用環境作りをしていくことが重要だと思います。