
「転職したい」「今の職場は合っていない」と考えている看護師さんも多いのではないでしょうか。
では実際に転職した看護師さんは、どんな理由で転職したのでしょうか。
今回は転職経験のある看護師202人にアンケートを実施。
「転職の理由」や「転職先」について聞きました。
- 調査対象:転職経験のある看護師
- 調査日:2021年10月2日~21日
- 調査方法:インターネットによる任意回答
- 調査人数:202人(女性177人/男性25人)
看護師の転職理由1位は「転居のため」
転職経験のある看護師202人に「転職した理由はなんですか?」と聞いたところ、回答は以下のようになりました。
上位7位までをランキング形式で紹介します。
回答がバラけた中、1位になったのは「転居のため」です。
転居の理由は「結婚」「配偶者の転勤」などで、やむなく転職した人が多いとわかりました。
2位以下には「人間関係への不満」「夜勤がツライ」などがランクイン。
8位以下には「スキルアップのため」「職場が多忙だから」「体力・体調面での不安」「子育てのため」などが入っています。
では具体的な回答を紹介します。
1位 転居のため
- 結婚のため、地元から関東の病院へ転職しました(女性、転職時24歳)
- 地元に帰りたかったため(男性、転職時30歳)
- 夫の転勤で通えなくなったため(女性、転職時32歳)
「転居のため」が1位でした。
転居の理由は「家族の転勤」「結婚」「地元へのUターン」など。
「母の体調不良をきっかけに東京の実家に戻ることになった」という人も。
やむを得ない転居なら、退職・転職理由としてそのまま伝えても、採用担当者に悪い印象は与えないでしょう。
また「家を建てて職場が遠くなったため」と、マイホーム購入をきっかけに転居・転職した人も複数いました。
2位 人間関係への不満
- 人間関係がうまくいかず、ストレスが溜まって体調を崩してしまったからです(女性、転職時26歳)
- 仲間内のいざこざがあったため転職しました(男性、転職時27歳)
- 人間関係で精神的にストレスがあったため(女性、転職時39歳)
2位は「人間関係への不満」です。
「先輩と合わなかった」「派遣職員として働いていたが、常勤看護師と合わなかった」などの回答が寄せられています。
「人間関係のストレスで体調を崩した」という人も。
ただ面接で「人間関係が悪くて」「馴染めなくて」とストレートに伝えると、面接官がマイナスイメージを抱いてしまう可能性もあるので注意が必要です。
3位 夜勤がツライ
- 夜勤のない仕事をしたかった(女性、転職時25歳)
- 多い時には月9回の夜勤があり、体調を崩してしまったことがきっかけで退職を決意(女性、転職時26歳)
- 夜勤が大変で、生活リズムが崩れてしまったので(男性、転職時40歳)
3位に入ったのは「夜勤がツライ」です。
「ワークライフバランスを重視し、夜勤のない勤務形態にしたかった」「夜勤が体に合わなくなった」などの回答が寄せられました。
「結婚に伴い、夜勤のない職場へ変わりたかった」「夜勤があり、子どもといられない」など、家庭・育児とのバランスをとるために夜勤から離れたかったという人も多数。
「教員免許取得のため大学に進学したいと考え、受験勉強の時間確保のため残業や夜勤のない職場に変えたかった」という意見もありました。
4位 収入を上げるため
- 給料に不満があったため(男性、転職時24歳)
- 仕事の拘束時間と給料が見合わなかった(男性、転職時29歳)
- 給料やボーナスが低すぎる(女性、転職時33歳)
4位にランクインしたのは「収入を上げるため」。
「ボーナスがお小遣い程度」「忙しいわりにはお給料が少なかった」などの回答が寄せられました。
「高給」なイメージもある看護職ですが、「仕事内容や拘束時間と収入が見合っていない」と感じる人は多いようです。
5位 労働時間への不満
- 長時間勤務になる日が多く、体力や精神的にも大変な勤務でした。若い時はいいですが「長く勤務するのは大変」と思い転職しました(女性、転職時28歳)
- 急性期の病院で残業が多かったため(男性、転職時30歳)
- 残業続きで体調を壊したから(男性、転職時41歳)
「労働時間への不満」が5位に入りました。
「残業が多い」「定時に帰れない」などの回答が多数。
診療科の特性や病院の人員配置などにより、残業が多くなる職場もあります。
「出産を機に時短勤務に切り替えたのに、残業が多くて子どものお迎え時間にも間に合わないことが多かった」という体験談もありました。
6位 希望の診療科にうつるため
- 希望していた科に配属されなかったから(女性、転職時19歳)
- 若いうちに新しい部署にチャレンジするため(男性、転職時26歳)
- 以前から憧れていた手術室で働きたかったから(女性、転職時35歳)
6位は「希望の診療科にうつるため」でした。
「やりたい分野があったから」「急性期病院に勤めたかった」などの回答が寄せられています。
「助産師として入職したのに消化器内科の仕事を任され、退職しました」という体験談もありました。
「やりたい業務につくため」というのは前向きな転職理由ではありますが、伝え方には注意。
伝え方によっては、面接官に「やりたくない仕事から逃げ出した」というイメージをもたれてしまう可能性もあるからです。
「希望の仕事ではなかったが3年間取り組み、学びを得た」「経験を活かし、希望の業務につきたい」などの伝え方がオススメ。
7位 仕事内容への不満
- 患者・家族のクレーム対応などがつらかった(女性、転職時25歳)
- 看護師業務に疲れた(女性、転職時29歳)
- 嫌な仕事ばかりだったためです(男性、転職時40歳)
7位は「仕事内容への不満」でした。
「やりがいを感じられなかった」「看護師に向いていないと思った」などの回答が寄せられています。
「管理職だったため責任・プレッシャーが大きかった」「後輩指導も研究もしていたので」など、仕事内容が多く負担だったという人もいました。
看護師の転職先1位は「病院」
続いて「転職後の勤務先」について聞いたところ、回答は以下のようになりました。
回答が多かった上位5位までを紹介します。
1位になったのは「病院」。
2位にも「クリニック・診療所」が入り、医療機関に転職した人が多くなっています。
一方で5位にはIT企業や製造業といった「一般企業」がランクインし、看護の現場を離れた人もいることがわかりました。
6位以下に入ったのは「健診センター」「保育園」「看護学校」など。
なお複数回転職した人もいるため、回答は複数回答となっています。
ではそれぞれの転職先を選んだ理由について、実際の回答をもとに紹介します。
1位 病院
- リハビリテーション病院。回復期であり患者さんに寄り添える看護がじっくりできると思ったため(女性、転職時24歳)
- 大学病院。給料がよく、連休が取りやすいから(男性、転職時29歳)
- 中規模の病院。子育てに関しての福利厚生がしっかりしている病院を選びました(女性、転職時35歳)
「病院」が1位でした。
一口に病院と言っても、「総合病院」「単科病院」「急性期」「慢性期」とさまざまな病院が寄せられました。
選んだ理由もそれぞれの転職理由に合わせて「家から近い」「希望診療科で働ける」「収入アップが叶う」「院内保育所がある」などさまざま。
「看護師を続けるか悩んでいましたが、前職(急性期)が自分にあっていなかった可能性があると考え、慢性期の病院にも挑戦してみようと思いました」という体験談も寄せられています。
2位 クリニック・診療所
- 美容クリニック。夜勤がないのに大学病院と同じ年収だったため(女性、転職時27歳)
- 個人クリニック。病院のように大勢のスタッフではなく、わきあいあいとした雰囲気を求めたから(女性、転職時39歳)
- 透析クリニック。身体介護がなくて定時に帰れるため(女性、転職時48歳)
2位は「クリニック・診療所」です。
「夜勤がないから」という理由を挙げた人が目立ちました。
他に「もともと中規模病院で勤務していましたが、より患者さんの近くに寄り添えるから」「地域に戻った患者さんと関わりたかった」という理由も。
「アットホームな雰囲気」「勤務地が近い」「扶養内で働ける」という回答もありました。
3位 介護施設
- 家庭を優先したくて、土日休みを希望したため(女性、転職時24歳)
- 以前の勤務先に比べて、看護師の残業が少ないイメージだったから(女性、転職時27歳)
- 見学させていただいた時に「そこまで忙しくない」と感じたから(女性、転職時30歳)
3位に入ったのは「介護施設」です。
「前の職場に比べて残業が少ない」「体力的な負担が少ない」といった理由が目立ちました。
収入面について「病院より仕事量が少ないのに給料がよかった」「給料がグレード制なので、頑張れば昇給を目指せる」という回答も。
また「興味があったのと、先輩看護師からの勧めがあったため」「知り合いの紹介」など、周りにすすめられたという人もいました。
4位 訪問看護ステーション
- 訪問看護に興味を持ち始めていた時に、近所にステーションを見つけたから(男性、転職時26歳)
- 病院での勤務経験しかなかったため、訪問看護に携わりたかった(女性、転職時29歳)
- 自宅から近く、わりと自由がきくと聞いたから(女性、転職時39歳)
4位に入ったのは「訪問看護ステーション」です。
「もともと訪問看護に興味があった」という回答が目立ちました。
「学生時代に訪問看護の実習に行ったときに、利用者様と訪問看護師の信頼関係に感動し、自分もこんな信頼される看護師になりたいと思っていた」という人も。
他には「時間の融通がきく」「夜勤がない」「時給が良かった」「家から近い」などの回答が寄せられています。
「訪問看護を希望していたものの移動が苦痛だったので、住宅型有料老人ホーム併設の訪問看護ステーションを選んだ」という人もいました。
5位 一般企業
- 飲食店・接客業。看護師としての仕事にやりがいはありましたが、他にも経験してみたいと思う職業があったからです(女性、転職時26歳)
- 生命保険の営業職。病院で保険の知識も得たので、活かせる職に就きたかったから(女性、転職時27歳)
- 情報通信業の事務職。医療の分野から離れたいと思ったから(男性、転職時35歳)
「一般企業」が5位に入りました。
一般企業とはいえ「健康管理室」「大手企業の産業保健師」など、看護師の資格・経験が活かせる仕事に就いた人も。
一方で「体に負担がかからない」などの理由で、事務・営業・コールセンターなど、医療から離れた人も多数いました。
転職が順調だった看護師さんは82.6%
最後に「転職が順調だったか」と聞いたところ、回答は以下のようになりました。
「順調」「まあ順調」と答えた人が合計で82.6%。
多くの人が順調に転職活動を進めたことがわかります。
病院・介護施設・保育所など看護師を求める職場は多いので、求人数が多いことも理由でしょう。
看護師の転職ですと「短期間での離職経験がある」「まったく未経験の診療科に転職希望」といったケースでなければ、比較的採用が決まりやすいともいわれます。
では「順調だった理由」「大変だった理由」について、具体的な回答をもとに紹介します。
転職が順調だった理由
- 相談・お仕事紹介・面接までかなりスムーズで、転職サイトの担当者もとても親身になって対応してくださったため(女性、転職時25歳)
- 転職先の病院が人手不足だったため(男性、転職時28歳)
- 在宅への往診を始めた診療所やクリニックが増えて、看護師募集が求人でかなり多く出ていた(女性、転職時38歳)
転職が順調だった人からは「求人が多かった」「転職サイト・転職エージェントにサポートしてもらった」などの回答が寄せられました。
「面接の場ですぐに採用が決まった」「大学病院での経験があったので、面接なども難なくクリア」という体験談も。
「転職先で友人が働いていたこともあり、病院の雰囲気もよくわかっていたため不安が少なかった」という人もいました。
転職先候補の雰囲気などを教えてくれる人がいると心強いですよね。
転職エージェントを利用した人からも「疑問点や金額面など聞きづらいところも、業者さんが間に入って聞いてくれた」という回答がありました。
転職が大変だった理由
- 保育園付きの病院は限られた数しかなく、選択肢が少なかった(女性、転職時27歳)
- 円満退職するために、1年前に辞表を提出して、自分だけが行っていた業務の引き継ぎを行っていた(男性、転職時29歳)
- スキルが足りないと感じることがあった(女性、転職時35歳)
転職が大変だった人からは「条件に合う求人が少なかった」「何度も見学・面接に行くのが大変だった」などの回答が寄せられました。
転居にともなう転職で「慣れない土地での仕事探しだったため、場所のイメージがつかない部分は大変だった」という人も。
また看護職以外への転職を目指していた人からは「医療関係以外の仕事を探しているのに、履歴書を見るとすぐに医療関係を薦められる」という声もありました。
転職活動に付随して「引き継ぎなどの退職準備が大変だった」という体験談も寄せられています。
まとめ
転職経験がある看護師202人にアンケートを行ったところ、転職理由第1位は「転居のため」でした。
家庭の事情によるUターンや配偶者の転勤が理由で転職した人が多いとわかりました。
転職先1位は「病院」。
全体的には看護師としての経験・資格を活かせる職場に転職した人が多かったものの、一般企業に転職して看護から離れた人も。
「転職が順調だった」と答えた人は82.6%で、「すぐに採用された」という声もありました。
「転職サイトやエージェントを利用し、スムーズに転職活動が進められた」たという体験談も複数ありました。